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イカとんび

手術をしてきました。

別件で皮膚科に行って(そっちは何でもなかった)ついでに「これ気になっているんですけど」と相談すると「友達の先生を紹介するから今日手術しちゃう?」と提案されまして。突然の話だったので尻込みしていると「これ放っておくと大きくなるからやった方がいいよ」と畳みかけられて逃げられなくなったのです。

先生。これ、記憶にあるだけで20年モノなんですけど…とは言い出せなかった。

左腕上腕部に固いしこりのようなものがあって脂肪の塊だと思っていたのですが、実は石灰化上皮腫という病状らしいのです。私の周りの素人連中は「それは虫に産み付けられた卵の跡だ」「膿だから針で刺して中身を取れば大丈夫」「ウオノメコロリを貼れよ」などと独創的な奇説珍説を振りかざして私を脅し続けてきたのですが…おまえら全部間違いだったからな!!

まー、圧痛は多少あるけれどさ。放っておけば悪さもしないし別にいいんじゃないの?という緩すぎる大らかさ(というかアホさ)でこの奇妙な共生を看過し続けきたわけです。20年以上。

で、その日の夕方にオペしてきました。病院に行く前は関羽スタイルでやっちゃう?(三国時代の名将関羽。宴席で談笑しながら毒の入った矢じりの傷を切開して骨を削ったという伝説がある)などと余裕ぶっこいていたのですが…局部麻酔を打たれる前あたりから恐ろしくて手汗が止まらなくなりました。無理無理絶対無理!

でも、麻酔ってすごいですね。最初にチクッとした以外は何をされているのかまったく分かりませんでした。シャリシャリという音から先生がハサミのようなもので患部を摘出しているのは何となく分かったけれど、痛覚はまったくなし。それでも術中に指先が動かせる。医学って本当にすごい…と手術台の上でぼんやりと考えていました。

摘出された患部はちょうどおつまみの”イカとんび”のようなものでした。しかも大きい(ビー玉とピンポン玉の中間くらいの大きさ)。術後、先生がメスを突き立てて見せてくれたのですが固くてまったく刃が通らない。アルミバットに叩きつけると硬質の音が返ってくる。こんなものが身体に入っていたとは。

この奇妙なイカとんびはホルマリン漬けにして頂いて家に持って帰ってきました。何かこの小瓶に閉じ込められたイカとんびを見ていると、自分から切り離された宿痾に対する復讐心から若干サディスティックな気持ちになってきます。

時々この小瓶の中身を眺めつつ、手荒く振ってカラカラする音を聞くことがストレス発散になりそうです。

 

 

 

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